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DOWAエコジャーナル

2026.09.01 サーキュラーエコノミー

循環経済行動計画とは?策定の背景と企業の役割を解説

リサイクル

2026年4月21日、政府の「循環経済に関する関係閣僚会議」において「循環経済行動計画」が取りまとめられました。
近年、「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への関心が高まっています。資源を有効に活用しながら持続可能な社会の実現を目指す考え方として、国内外でさまざまな取り組みが進められています。

今回策定された循環経済行動計画は、日本全体で循環経済への移行を進めるための方向性を示した方向性を示したアクションプラン(行動計画)です。この記事では、循環経済行動計画を策定した背景と、企業が押さえておきたいポイントを解説します。

循環経済行動計画とは

循環経済とは、資源を一度使って終わりではなく、製品や素材をできるだけ長く使い、使用後も回収・再資源化して再び活用する考え方です。

資源の有効活用と環境負荷の低減、さらに産業競争力の強化を同時に目指す取り組みとして、国内外で注目が高まっています。

本計画では、再生資源の供給体制を強化することや、日本をハブとした国際的な資源循環ネットワークの構築、地域資源の活用などが掲げられています。循環経済は、環境対策だけでなく、企業の資源確保や事業継続にも関わる重要なテーマです。

循環経済行動計画が策定された背景

脱炭素化の進展に伴い、蓄電池やモーター、半導体などの製造に不可欠な鉱物資源の需要は今後さらに拡大すると見込まれています。また、地政学リスクの高まりを背景に、資源やエネルギーの安定確保の重要性も改めて認識されています。
こうしたなか、世界では天然資源だけでなく、再生資源をめぐる獲得競争も激しくなっており、重要鉱物や金属資源、再生資源の確保は、各国の産業政策や経済安全保障とも結びつくテーマです。

日本は石油や金属など、多くの資源を海外からの輸入に依存しています。一方で、国内で発生するリサイクル可能な資源の一部は、海外へ輸出や、焼却、埋立されており、国内で十分に活用しきれていないという課題があります。
こうした状況を踏まえ、一次資源である天然資源に頼るだけではなく、二次資源である再生資源を国内外で確保し、安定的に活用できる仕組みづくりを推進するために策定されました。

世界の取り組み

再生資源の確保に向けた取り組みは、日本だけでなく世界各国で進められています。各国の政策動向を見ていきましょう。

EUの取り組み

EUでは、循環経済に関する制度整備が先行して進んでいます。廃電子機器などの域外輸出規制の強化や、バッテリーの回収義務、製造時の再生材利用に関するルールづくりなどが行われています。
製品設計の段階から耐久性や修理のしやすさ、再利用・再資源化のしやすさを考慮する動きも他地域に先駆けて広がっています。

こうしたEUの取り組みは、製品をつくる企業にとって、環境対応の面だけでなく、グローバル市場での競争力の面でも大きな影響を及ぼします。

> あわせて読みたい:環境分野の情報管理 その2 デジタル製品パスポート(DPP) ~EUが推進する「製品の一生を見える化」する仕組み~

中国の取り組み

中国では、重要鉱物に対する輸出管理の強化や、国内の資源リサイクル体制の整備が進められています。2024年には、官民が出資する中国資源循環集団が設立されるなど、国として資源循環を強化する動きが見られます。

本計画では、資源を海外に依存する日本にとって、こうした動きは調達リスクの高まりに影響するとされています。今後は、必要な資源を安定的に確保するためにも、国内で発生する使用済み製品やスクラップなどを、いかに資源として循環させるかが重要になるでしょう。

アメリカの取り組み

アメリカでも、国内で発生する再生資源の活用に向けた動きが進んでいます。国内発生の高品質銅スクラップの一部について、2027年から国内販売を義務付ける動きや、レアメタルのリサイクルを行う企業への金融支援を行っています。

各国が再生資源を国内で確保しようとする中、日本にとっても、国内外の資源循環ネットワークをどのように構築するかが重要な課題です。

資源循環における日本の課題

日本は多くの資源を輸入に頼っているため、国際情勢や各国の輸出規制の影響を受けやすいと言えます。特に、電動車、半導体、データセンター、再生可能エネルギー関連設備などに使われる金属資源は、今後も需要の増加が見込まれています。

その一方で、日本国内では、再生材を質・量・コストの面で安定的に調達できるサプライチェーンが十分に確立されていないことが課題視されています。動脈産業である製造業と、静脈産業である資源循環産業との連携が十分に進んでいないことも、再生資源の活用を難しくしている要因のひとつです。

資源輸入への依存

日本は、石油や金属資源をはじめ、多くの資源を海外からの輸入に依存しています。特に主要レアメタルのリチウム、コバルト、ニッケルなどの重要鉱物は、電動車や蓄電池、電子部品などに欠かせない資源であり、安定的な確保が重要です。

2024年の輸入先を見ると、リチウムは中国(68%)、コバルトはフィンランド(43%)、ニッケルはオーストラリア(58%)が最大の供給国となっています。

参考:経済産業省資源エネルギー庁

資源の安定確保には海外からの調達だけでなく、使用済み製品から資源を回収・再資源化し、再び供給につなげる循環型のサプライチェーン構築が不可欠です。

国内資源が十分に活用されていない

国内で発生する鉄スクラップ、アルミスクラップ、銅スクラップ、プラスチックなどの再生資源の一部は、国内で十分に活用されず、海外輸出や焼却、埋立に回っています。経済産業省の資料では、鉄スクラップ771万トン、アルミスクラップ44万トン、銅スクラップ42万トン、プラスチック約126万トンが海外に輸出されていることが示されています。

参考:内閣官房 循環経済行動計画(概要)

背景には、再生材を安定的に供給するためのサプライチェーンが十分に整っていないことや、再生材の需要・市場がまだ形成されていないこと、リサイクル技術やインフラに課題があることなどが挙げられています。

循環経済行動計画の狙い

循環経済行動計画の大きな狙いは、国内外の再生資源を安定的に確保し、日本の産業競争力や経済安全保障につなげることにあります。これまで資源循環は主に環境保全の観点から推進されてきましたが、近年は産業競争力の強化に加え、資源の安定確保を通じた経済安全保障の観点からも重要性が高まっています。本計画では、重要鉱物や金属資源などのリサイクルや再生材の活用を重要な施策として位置付けています。

また、国内で発生するリサイクル可能な資源の海外流出や焼却・埋立を抑え、資源として国内で活用できる仕組みを整えることも重要な方向性として示されています。
こうした考え方を実現するため、計画では5つの柱が掲げられています。

循環経済行動計画の主な施策

循環経済行動計画では、以下の5つの柱が掲げられています。

  • 再生資源供給サプライチェーンの強靱化
  • 日本をハブとする国際資源循環ネットワークの構築
  • 地域循環資源の徹底活用による地域活性化
  • 資源循環分野の国際ルール形成
  • 循環経済の国民運動化

企業への影響が大きいと考えられるポイントを解説していきます。

再生資源供給サプライチェーンの強靱化

最も大きな柱のひとつが、重要鉱物や金属資源などの再生資源を安定的に供給するためのサプライチェーンづくりです。そのため、メタルリサイクルの推進が強化されています。
循環経済行動計画では、鉄、アルミ、銅、永久磁石などについて、2030年に向けた目標が示されました。

これらの施策は、単にリサイクル量を増やすことだけを目的としているのではありません。製造業が必要とする品質の再生材を安定的に供給し、国内産業の競争力を支えることが狙いです。

参考:内閣官房 循環経済行動計画(概要)

2030年の目指す姿:

鉄スクラップを高品位化する処理能力約200万トン/年を目安とし、追加的に国内で確保脱炭素化に向けた電炉の活用が進む中、高品質な鋼材を生産するために、高品位鉄スクラップの確保が重要とされています。
そのためには、低品位のスクラップを選別し、高品位化する技術や設備が必要になります。また、不適正スクラップヤード対策や不適正輸出への対応も重要な施策として位置付けられています。

> あわせて読みたい:廃棄物処理法の改正案を解説! ~スクラップヤードへの許可制導入と排出事業者への影響~

アルミ

2030年の目指す姿:再生アルミ原料の使用が一般に難しいとされるアルミ展伸材について国内生産量の約4割を目安として再生アルミ原料由来とする

アルミは、自動車や建材など幅広い分野で使われる素材です。日本は原料となる新地金(天然資源から作られるアルミニウム地金)を海外からの輸入に100%依存しているため、輸入への依存度を下げるうえで再生アルミ原料の活用が重要です。

目指す姿の実現のため、再生アルミ原料の選別・不純物除去技術や、再生アルミ原料を活用した製品製造技術の開発推進と、その実用化に向けた設備投資やリサイクル体制の整備が施策として挙げられています。

2030年の目指す姿:2030年時点で、国内で生産される銅(電解銅)の約3割を、e-scrapや銅スクラップ等の再生資源由来とする

純度の高い銅は、電気自動車、AI関連分野、データセンターなどで需要の増加が見込まれる重要な素材です。日本は原料となる銅精鉱を海外からの輸入に依存しており、e-scrapや銅スクラップなどの再生資源を活用する基盤づくりが急務です。

永久磁石

2030年の目指す姿:国内で供給される永久磁石の原材料の約3割をリサイクルによって賄う

電動車の普及等に伴い、レアアースを用いた永久磁石の世界需要の増加が見込まれ、生産能力確保が課題です。

こうした状況を受け、同志国との国際的な磁石リサイクルネットワークの構築や、使用済磁石の回収・解体・選別・分離精製に関する技術開発、実証・検証を推進することとしています。さらに、設備投資やリサイクル体制の整備を進めることで、リサイクル由来の原料供給拡大を目指しています。

> あわせて読みたい:レアアースとは何か? ~私たちの暮らしを支える「産業のビタミン」~

DOWAグループは、独自の技術と複数の製錬所のネットワークによって20種類以上の金属を回収できる技術力と、正確で迅速な分析・評価を強みに、グローバルにE-scrapを集め、各種金属に再生して、資源を循環させています。

再資源化拠点等の構築・ネットワーク形成

再生資源を安定的に供給するためには、回収、保管、解体、選別、再資源化、製錬などを担う拠点やネットワークの整備が欠かせません。

日本の資源循環産業は、地域ごとに小規模分散している面があり、設備投資や事業規模の拡大が進みにくいという課題があります。こうした状況を踏まえ、本計画では再資源化拠点等の構築・ネットワーク形成に向け、2030年までに官民で約1兆円の投資を目指す方針が示されています。

その中で、廃棄物の回収や選別、再資源化を担う静脈産業は重要な役割を果たします。DOWAエコシステムも、資源循環を支えるインフラの担い手として、持続可能な資源供給体制の構築に貢献していきます。

日本をハブとする国際資源循環ネットワークの構築

国内資源の活用に加えて、国際的な資源循環ネットワークの構築も重要な施策です。本計画では、日本の製錬技術やリサイクルに関する知見を生かし、同志国やASEAN諸国などと連携しながら、資源循環ネットワークを構築する方向性が示されています。

特に、e-scrap、廃バッテリー、廃自動車などに含まれる金属資源を適正に回収・リサイクルする仕組みづくりは、経済安全保障の観点からも重要です。資源循環ネットワークの確立・構築等に向けて取り組みを進めることになっています。

また、バーゼル条約に基づく輸出入手続きの円滑化も施策のひとつとして掲げられています。バーゼル条約とは、有害廃棄物の越境移動や処分を規制し、不適正な輸出や環境汚染を防止するための国際条約です。

今回課題視された点は、再生資源の輸出入にあたって事前通告や同意取得などの手続きが必要となり、案件によっては数カ月を要することもあることです。本計画では、こうした手続きの効率化を進めることで所要期間をおおむね1カ月程度まで短縮し、適正な国際資源循環を促進することが期待されています。

循環経済を国民運動に

循環経済を進めるためには、企業だけでなく、自治体や消費者を含めた幅広い主体の参加が必要です。本計画では、循環経済パートナーシップ(J4CE)や資源循環自治体フォーラムなどを通じて、情報共有や対話の場を広げる方針が示されています。

特に重要なのが、製品を製造・販売する企業(動脈産業と、使用済み製品や廃棄物の回収・リサイクルを担う企業(静脈産業)の連携強化です。資源循環自治体フォーラムでは、国の政策や先進自治体の事例を共有するとともに、自治体と企業の意見交換を通じて、製品の設計から回収、再利用、再資源化までを一体で考える仕組みづくりを後押しします。

再生資源の利用拡大や安定供給を実現するためには、製造業、自治体、リサイクル事業者が連携し、資源を循環させる仕組みを構築することが欠かせません。本計画では、製造業、自治体、リサイクル事業者の協力を促進し、循環経済を社会全体へ広げていくことを目指しています。

循環経済行動計画において企業に求められること

ここまで、循環経済行動計画の背景や主な施策を見てきました。では、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。
企業にとっては、資源循環を環境面だけでなく、事業基盤の強化につながるテーマとして捉えることが重要です。

動脈産業・静脈産業の連携を強化する

循環経済の実現には、製品を製造、販売する動脈産業と、使用済み製品や廃棄物を回収、処理、再資源化する静脈企業の連携が欠かせません。

今回の計画でも、製造業と資源循環産業の連携による産業競争力強化が重要な施策として示されています。再生材を安定的に活用するためには、回収や選別、再資源化の仕組みだけでなく、製造側が求める品質や量、コストに応えられるサプライチェーンを整える必要があります。

企業には、自社だけで完結する取り組みではなく、取引先、リサイクル事業者、自治体などと連携し、資源が循環する仕組みをつくる視点が求められます。

DOWAグループと株式会社村田製作所でリサイクル金属を確保・活用する資源循環スキームを構築

DOWAグループでは、村田製作所と連携し、工程廃棄物からリサイクル金属を回収し、再び製品として活用する資源循環スキームを構築しています。資源循環による環境負荷低減と資源確保を両立した事例として注目されています。ぜひ以下の記事もあわせてご覧ください。

事例紹介:株式会社村田製作所からサプライヤー表彰を受賞 ~2社間でリサイクル金属を確保・活用する資源循環スキームを共同で構築~

再生資源の活用を検討する

世界的に、企業が再生材を活用する動きは広がっています。内閣官房が取りまとめた「循環経済行動計画」の概要資料でも、グローバル企業において、ブランド価値向上の観点から再生材を利用する動きが加速しているという方向性が示されています。

今後、再生資源の活用は、環境配慮の取り組みとしてだけでなく、サプライチェーン上の要請や製品価値を高める要素として重要性を増していくと考えられます。

一方で、再生材を安定的に使用するためには、品質、供給量、コスト、トレーサビリティなどの確認が必要です。企業には、自社製品や調達方針の中で、どのように再生資源を活用できるかを検討することが求められます。

資源循環を新たな事業機会として捉える

循環経済行動計画では、資源循環を環境対策にとどめず、産業競争力の強化や地域活性化につなげる方針が示されています。
今後は、再生資源の利用拡大、回収スキームの構築、地域内での資源循環モデルの形成などを通じて、さまざまな業種で新たな協業の機会が生まれる可能性があります。
企業には、規制対応として受け身で取り組むだけでなく、自社の事業成長やサプライチェーン強化につながるテーマとして、資源循環を検討する視点が重要になるでしょう。

事例紹介①:金属リサイクル分野における戦略的パートナーシップ契約締結
事例紹介②:クラレとDOWAエコシステム、活性炭再生による資源循環事業の共同検討を開始

廃棄物を資源へ。循環の仕組みづくりが競争力に

循環経済行動計画では、再生資源の利用拡大や資源循環ビジネスの創出に加え、動脈産業と静脈産業の連携強化が重要なテーマとして位置付けられています。

資源制約や脱炭素への対応が求められるなか、使用済み製品や製造工程から発生する副産物を資源として循環させることは、安定的な資源確保やサプライチェーンの強靱化にもつながります。今後は、資源循環への取り組みそのものが、企業の競争力を左右する要素のひとつになっていくでしょう。

DOWAエコシステムは、使用済み電子機器や自動車、製造工程から発生する副産物、廃棄物など、多様な資源の回収・再資源化に取り組んでいます。今後も培ってきたリサイクル技術とネットワークを生かしながら、企業や自治体との連携を通じて資源循環の仕組みづくりを進め、循環型社会の実現に貢献していきます。

資源循環やリサイクルに関するお悩みは、DOWAエコシステムへご相談ください。

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田岡 この記事は
DOWAエコシステム 企画室 田岡 が担当しました

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